凹んだ話 ー東京編ー

私は20代前半を首都・東京で過した。いつの時代も若者が集まって来る都市だ。
凄く魅惑的で、かっこよくて、いろんな人や物に満ち溢れ、それでも淋しくて、苦しくて、孤独であり、しかし確実に楽しい街であった。
私は世間知らずであったが、自分の力を信じていた。

しかし給料をちょうだいするとなると、そう上手く行く事ばかりではない。自虐的になったり、自信を再確認したりの繰り返しを続けた。

仕事は忙しかった。

その頃、東京都内の職場から1時間30分位のアパートに住んでいた。月4万、駅から徒歩20分程で、夜は駅を離れると薄暗く人気のない道のりであった。
当時、残業手当はちゃんと付いたが、日々、深夜の残業が続き、駅からアパートへ向かう間にチャリの上で夕飯を食べることも度々であった。アパートに着けばシャワーを浴びて、パイプベットに潜り込むだけである。

そんな或る日、深夜に電車を降りコンビニで夕食のメロンパンを買った。
チャリを漕ぎながら左手でハンドルを押さえ同時にそのメロンパンの袋を持ち、右手で袋を開封しようとした。
何故なのか、いつものように上手く袋が開かなかったため、力を込めた。
すると「パン!!」という音と共に勢いよくセロファンの袋が開き、メロンパンが飛び出した。
メロンパンはアスファルトの上に「コン!!」と落ち、トントンコロコロコロと転がり、ドブの中に「ポチャリ」と飛び込んだ。

この時ばかりは「やっぱ九州に帰にろうかなあ」と考えたのであった。