勝海舟は「氷川清話(講談社学術文庫)」でどんな時でも、どんな場面でも冷静な判断を行うための要点を次の通り語っています。
人は何事によらず、胸の中から忘れ切るということが出来ないで、始終それが気にかかるというようでは、なかなかたまったものではない。いわゆる座忘といって、何事もすべて忘れてしまって、胸中かつ濶然として一物を留めざる境界に至って、初めて万事万境に応じて、横縦自在の判断が出来るのだ。しかるに胸に始終気掛りになるものがあって、あれの、これのと、心配ばかりして居ては、自然と気が飢え神が疲れて、電光石火に起り来る物事の応接は出来ない。全体、事の起らない前から、ああしよう、こうしようのと、心配するほど馬鹿げた話はない。
このように雑念を忘れ去ることの重要性を説いています。
心を磨ぎ澄ましておけば、いつ事変が襲ってきても、それに対処する方法は自然に思い浮かぶものだ。いわゆる物来りて順応するのだ。おれは昔からこの流儀でもって、種々の難局を切り抜けて来たのだ。
といった言葉で最後を締めています。