金印「漢委奴国王」の鈕(ちゅう・印のつまみの部分)は駱駝を蛇に改造したものではないかという説があるようです。言われてみれば蛇というよりは駱駝に近い様な気がしないでもありません。
中国の各王朝は、地方を治める王族や臣下、豪族部族に印綬を下しますが、このとき相手によって鈕の種類を選んで与えます。王族には「亀」の鈕(亀鈕・きちゅう)、北方の民族には「駱駝」の鈕(駝鈕・だちゅう)、南方の民族には「蛇」の鈕(蛇鈕・じゃちゅう)をといった具合です(福岡市博物館の説明を参考)。
この中で「蛇鈕」の王印は「漢委奴国王」印と中国・雲南省の「てん王之印」の二つしか発見されていません。
「てん王之印」の鈕は明らかに蛇の形をしているのですが、「漢委奴国王」の鈕はボテッとした感じで、ぱっと見では蛇がトグロを巻いた様なイメージがなかなか湧きません。
これは当時の金印彫刻家が北方民族向けの在庫(既存)の「駝鈕」の印を急遽、蛇の形に改造したものではないかといった事が考えられているです。駱駝の突き出した頭の部分を180度背中側に反らせ下あごの部分に蛇の目玉を刻印した。金印の写真を眺めているとそういった情景が思い浮かびます。
ただ、この再加工につての歴史学者の見解は、駱駝の頭部を外して切断部分を滑らかにし蛇の目玉を刻印したというものです。駱鈕の写真を確認してみると駱駝の頭部が結構大きいのでこの見解の方が正しいのかもしれません。
自分の目で確かめたい方は福岡市博物館のページ(http://museum.city.fukuoka.jp/gold/)で写真をご確認ください。