中学3年の正月、虫垂炎で死にかけた事がある。
吐き気と腹痛で近所の医者に行くと風邪と診断され学校を休んだ。その夜、母親が腹痛には腹を暖めるのが一番とお湯で温めたコンニャクを腹に当てくれた。生兵法とは恐ろしい、翌夜半には寒くもないのに私の身体はガタガタと震え出した。腹の中の虫垂炎はコンニャクの熱で急加速し終いには破裂したのだ。紹介された町の病院の医者から「腹膜炎を起こしていました。あと2日遅かったらあの世行きでした。」と伝えられたと父親から聞いた。
それから数年して知ったことだが、「走れメロス」の太宰先生も同じように腹痛を発症、湯たんぽで腹部を暖めたため盲腸から膿が流出、腹膜まで達したという。私は先生の信奉者だったので驚きとともに親近感を味合う事となった。ただ先生は湯たんぽ、自分はコンニャクという事で今となっては自分の方がチョットだけ笑えてしまう思い出である。
ところでだが昨今、医学は急速に進歩し過去では不治と言われた病も現在では命を救われる人々が多く、これは本人や家族にとって非常にありがたい事であり、自分自身も今この世に居れるのは医学の進歩のお陰なのである。ただ、たまに思う事がある。虫垂炎の治療が可能になったのが何十年前の事かは解らないが、その時から人類の虫垂の退化は止まってしまったのではないかと・・・。