官兵衛的な人たち

官兵衛的な人たち

えらく豪胆な人、すごく気配りのできる人、運動神経が超人的な人、仕事が超速い人、信じられないぐらいな美形な人。 永年 社会で仕事をしていると色んな面で優れた人とめぐり合うもので、私も「この人なんでこんな頭ええんやろ」と感じる人とめぐり合った事が何度かありました。その中でもっとも印象に残った人の話です。 その人はあるシステム開発を行うため立ち上げられたグールプのリーダーで一見は普通の人でしたが、仕事に関しては凄い人でした。ある日、仕事を上って二人で駅まで歩いている時の事、その人は始終無言だったので「なんか機嫌わるいのかな」と思い自分の方から話しかけると「ああっ、そうだね」「ああーっ」とか答えるだけでその後沈黙。3回目に話しかけると「ああっ、ちょっと今話しかけないで考え事してるから・・・・・」。 (気が届かなかった自分も悪いけど、そんな言い方しなくても・・・)と唖然とする私を尻目にリーダーは無言で思考中。しかし、駅に着くと「ごめんごめん、さっきの話なんだったっけ。」・・・私はその時にやっと気付いたのです。紙やペンがない時も、そして歩いている時にも、その人の頭の中はプロジェクトを完全遂行するための緻密なシミュレーションが行われていたことに・・・ そしてもう一人、印象に残っているのは数年間一緒に仕事をした同僚で、物事のパターンを掴み取ることが巧みな人でした。 「こんな時はこの人はこんな行動を、あの人はこんな行動を・・・」と様々なパターンを頭の中で抑えているようなところがあり、私も彼の心理作戦の罠に引っ掛かってダチョウネタ「どうぞどうぞ」の竜兵師匠の役回りを演じさせられしまった事が幾度かありました。そしてその同僚の才能は人間関係以外でも仕事はもちろんマージャン・パチスロの域にまで(あくまでも趣味のレベルで)発揮されていました。 しかし その才能も生まれ持っただけのものではなく、常に情報収集を怠らないという努力の上に裏打ちされたものではなかったのだろうか?とその頃の事を振り返るとそう思えてきます。 話は移って戦国時代。 豊臣秀吉が長い間 考え抜いた事柄を黒田官兵衛に問いかけてみると、官兵衛は即座にその解答を導き出し、秀吉を驚かせます。またそれが一度や二度ではなかったので、秀吉も官兵衛の能力を尊敬する一方で畏怖心も芽生えたといわれています。 しかし官兵衛はその難問に本当に一瞬の閃(ひらめ)きだけで即座に答えたのかは個人的には疑問に感じます。独自の情報網を駆使し、様々な人々と会い情勢を語らい、また寝床でも厠でも情勢分析、シミュレーションを常日頃から怠らず、またそれらの努力を苦としない官兵衛の姿がこの逸話の向う側に想像できるのですが・・・・・。 もしかすると秀吉は官兵衛の閃きの速さに驚いたのではなく、天下取りを目指す自分と同じ目線で情勢を分析する官兵衛の視線の高さ、視界の広さに戸惑いを感じたのかもしれません。