海舟の手切れ指南

海舟の手切れ指南

維新の頃の話です。とあるお役人が海舟先生を訪ねた際、雑談ついでに「愛人が飲み代を立て替えてくれるのです」とのろけます。
 
それからしばらくして、そのお役人が再び先生の元を訪れ、別れ話で先の愛人から「千両くれないと細君の所に暴れ込む」と脅されている事を打ち分けます。
明治の一両は一円、当時の円を現在の円で3万円(?)とすると、このお役人は愛人から3,000万円を要求されていることになります。
そこで先生
「な~に、構やしない、三百両ほど渡して、誠心誠意お頼みなさい。『お前が騒いで事が公になると、お役目御免となって困るから』と」
「いやいや、どうしても千両よりはまからないと申しますので・・・」
「マアマア、やってごらんなさいよ。」
 
そこでお役人、先生から言われた通りに誠心誠意で頼み込むと、愛人は罵詈雑言で
「こんなはした金では切れるものでもないが、あんたも余ほど力量のない男と見える」と三百両を受け取ります。
 
ところで先生はその愛人が別に三人の男を作っている情報を既に仕入ていたようで、その後、事情を知ったお役人は結構な見幕で先生に抗議したということです。
 
そしてこの話の最後に先生はこう語っています。
「俺が知ってる女将や女に会うと、こっちへの説法はまた別だ。『思い切り、しこたま取っておやりよ』と言うのさ。ただ、女は風体に余計かかるから、儲けはどれだけにもなりやしないよ・・・。」