島津氏は肥後、肥前、筑後と各地の豪族を従わせ北上し大友氏を追い詰めます。また筑前各地の豪族は大友氏と対立していたため、島津氏の北上を歓迎します。秀吉は島津征伐のため大軍を九州に上陸させるものの、九州では今だに島津に属する者が多い状況でした。秀吉の参謀・黒田官兵衛はこれらの豪族たちを味方に引き入れるために一計を案じ筑前、筑後、肥前、肥後の各城に廻文を送ります。その際、使者に次の通り口上するよう指示します。
秀吉公、武威盛なる由（よし）をいひ述べ、味方にまゐられば、秀吉公に、よき様に申、本領安堵せしむべし。但（ただし）小身の輩、嶋津と手切しては、忽（たちまち）身の禍（わざわい）となるべければ、内々志を通じ、殿下の御下向を待て、降参せらるべき由を、こまごまいひ遣さる。
この廻文により九州各地の豪族たちは安心して秀吉に内通し、秀吉下向の際には速やかに降参する者が多かったということです。
これは貝原益軒の『黒田家譜』に書かれている話です。
人を説得するには相手の立場をよく理解し、急がせず、追い詰めない事が肝要なのかもしれません。
