実の道にはそむくもの也

実の道にはそむくもの也

実の道を知らざる間は佛法によらず、世法によらずおのれおのれは慥(たし)かなる道と思ひ、よき事と思へ共、心の直道よりして、世の大がねに合せて見る時は、其身其身の心のひいき、其目其目の心のひずみによる、実の道にはそむくもの也。
真実を見る努力をせず表面的な事に惑わされている間は、仏の道にしても、世の中の道理にしても、自分の考えに間違いはないと思い込むものである。しかし、確かなる道をもって天の定規で計れば、贔屓の念や、物の捉え方のひずみに気が付くものであり、これらは『実の道』に背くものである。
 
これは宮本武蔵の『五輪書』に書かれている言葉です。


実の道 ・・・ 「真実を見る目」や「囚われのない生き方」などと思われます。
佛法 ・・・ 仏の道。
世法 ・・・ 世の中の道理。
直道 ・・・ 仏教用語で「悟りに向かう道」。
世の大がね ・・・ 大がねは直角を出す大工道具。「世」は「天」と言い換えてもよいかもしれません。平たく言えば「天の道理」。