二十五、六年前、俺はツーリングに夢中だった。
そんな時の或る日、その絶景は突然、俺の眼前に広がった。
おそらく東京から北海道に渡り3泊4日で帰って来れるか来れないかを、職場のお客さんと賭けて挑戦した旅の時だったと思われる。
早朝、東京を出発しその日は岩手県一関に宿泊、翌日に青森県大間から函館に渡り、深夜小樽のフェリーターミナルに到着後ベンチで野宿、3日目はフェリー泊で、4日目の早朝に新潟港へ上陸し国道8号線から17号線を南に辿った。
その途の山道だったと思うのだが、今となってはその場所は思い出せない。
ただ短いトンネルを抜けると、その正面には信号機が立っておりその向こう側は谷底のドン突きT字路だったのだ。
そのT字路にはガードレールのみが設置されていた。そしてそこを右折する際、ガードレールの向こう側をチラミした瞬間に俺の体は凍り付き、足が震えた。「断崖絶壁!深すぎる」。バイク上の俺の体は簡単にガードレールを飛び越える位置にあったのだ。
そのときのシーンは絶景に感動する思いと恐怖心が絡み合った微妙な感覚と共に俺の心に強烈に焼き付いたのだった。
いったいあの絶景は何処の風景だったのだろう。